ポーランドと手吹きガラスと岡本太郎さん
ベリー
 ちょうど20年前の今頃、入院するか出張に行くかというの究極とも言える選択に迫られ、悩んだあげく流れにまかせてポーランド行きを決めた。放任だった両親もさすがに心配して成田まで見送ってくれたのですが、送迎デッキから私の乗る予定のアエロフロートを見つけた母は「この娘はもう無事には帰らないだろう」と涙したそう。当時ジャンボでもないおんぼろのアエロフロートはいかにもすぐ落ちそうに見えたらしい。
 母の予感も的中していきなりのトラブルにみまわれ、私が目的地ワルシャワの空港に着いたのは、日本を発って33時間後。聞き慣れないポーリッシュが飛び交う社会主義国は当時の私には宇宙人の国かと思えた。空港に待つ迎えの車は驚く程に大げさで・・当時半官半民の会社の懐は余裕だったようでリムジン3台を連ね、すぐにクロスノのガラス工場へ、6時間の旅だった。当時この工場でAfternoonTeaやオレンジハウスに出すグラスを作っていた。

 工場に着き見学の後は早速の商談。寝不足と疲れでもうろうとする私に工場長が気遣って用意して下さったのは、チョコレートと濃いコーヒーとウォッカ。え〜っと思うもののここでひるんではこの後の商談で決まるものも決まらないと覚悟を決め、ぐいぐいといただいた。
 体調が悪く服用していた鎮痛剤とウォッカが体内で合体し、もうやけくそ状態に近かった。会社側から自由にオーダーして良いと与えられていた制限額のほぼいっぱいまでオーダーし、40フィートコンテナに満載になるよう仕立て、商談成立。その後はまた飲んで食べてで、記憶も曖昧だ。
 帰国後体調は悪化し、手遅れになった卵巣は薬ではどうにもならず切除の手術を受けることになり、これにはかなりショックを受けた。
 
 でも、この私のやけくそオーダーっぷりに気を良くしたのか、その後ポーランドサイドからは商談にはMiss Ikedaをよこしてくれとリクエストいただき、その後頻繁にポーランドを訪ねることになった。
 時間に余裕がある時は、ショパンの生家を訪ねたり、古い木造建築の教会を見て回ったりと随分楽しい思いもさせていただいた。
 またその後は、日本のポーランド大使館からもいろいろなレセプションのご招待をいただき、それがご縁で岡本太郎さんとお食事をご一緒すると言う夢のような一夜も経験させていただいた。

 何事も・・嬉しいことと悲しいこと、嫌なことと良いことはセットでやってくる・・世の中つじつまが合っていると言うのが母の口癖ですが、この頃になってやっと確かにと思えるようになった。
 嫌なことがあった時などは、あの時オーダーしたミモザやラズベリー、ローズマリーの手吹きのグラスを手にすると、あの時の辛かった思い出がよみがえり、「そのうち良いこともやって来る」「あの時に比べれば今なんてたいしたことない」と思える。
 ポーランドと手吹きグラスは私にとって大切な思い出、また訪ねたいな・・・

 
| 雑貨のおはなし | 03:05 | comments(0) | - | ↑TOP -
DURALEX ピカルディ
ピカルディ 
 雑貨という言葉の意味合いが変化し始めたのは、1966年に銀座ソニービルB2にソニープラザがオープンしたのが皮切りだったのではないでしょうか。このソニープラザはアメリカンスタイルのドラッグストアで、化粧品関連の小物の他、ノートやマグカップという日常の雑貨を販売する、日本初の輸入雑貨の専門店でした。
 そこから雑貨の専門店が広がりはじめ、雑貨が単なる日常にあるモノの意味に加え、アメリカやイギリス、フランスなどの生活文化を取り入れたスタイルをもその意味に加えて行ったのだと思われます。
 その象徴のような店名の文化屋雑貨店が渋谷ファイヤー通りにオープンしたのが1974年、そこから雑貨ブームが少しずつ加速し、そして1981年に渋谷パルコパート3にAfternoon Tea、広尾にF.O.B COOPというその後の雑貨業界の柱となる2店舗がオープンすると一気に雑貨ブームに火がついたのでした。

 私がこの2店舗を知ったのはその1年後の高校三年生の時、都内にある美術の予備校に通いはじめた頃でした。衝撃でした。ただのコップやコーヒーカップが、なんでこんなにスタイリッシュなんだろうと!!横浜の高校での授業の後に目白にある予備校まで通う日々でしたが、何度も渋谷や広尾に行ってしまい予備校に間に合わないことがありました。
 写真のグラスはDURALEXピカルディ。F.O.B COOPのオーナーの益永みつ枝さんがフランスから買い付けて初めて日本に紹介したものです。それまで見たこともない形のグラス、それもフランス製。憧れて憧れて、ついに1ダース購入しました。家族6人分×2個です。家のキッチンのグラスを全てピカルディにと今までのコップと総入れ替えして祖母に叱られました。

 DURALEX社はフランスのサンゴバン社という国営ガラス工場が強化ガラスを製品化するに伴い設立した会社で、その製品のシリーズの一つがピカルディです。車のフロントガラス用に開発された強化ガラスで、割れにくく、また割れても破片が鋭利でなく角の丸い粒状に割れるので、その安全性から多くのレストランやカフェで使用されている業務用グラスです。

 先に述べたAfternoon Teaを立ち上げたメンバーのお一人が、その何年かの後に私の上司となる訳ですが、私が雑貨にのめり込みその仕事をするきっかけとなったとも言えるピカルディ、思い出深い商品です。あれからずっと私のキッチンの定番。

 ただこのピカルディ、近年には「突然爆発するように割れた」という事故も起こっているようです。これは全面物理強化ガラスという特質によるものだそうで、大きな怪我をするような事例はまだないようですが、少し心配になります。
 日本市場からピカルディがなくなってしまったら・・・寂しですね。


 

 
 
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