母の実家は、葉山の一色でかなり昔から酒屋を営んでいました。酒屋と言っても米や、塩、味噌なども量り売りしている食料品店のようだったそうです。当時は網元も兼ねていたので、取引先や網子さんの出入りも盛んで、年中行事はかなり大々的にやっていたと。
時折母から聞く話しの中で、とっても面白いのは小正月のお話し。1月15日になると母が「今日は女正月だから、何もしませんよ。お寿司とりましょう。」と言うのです。いつもぼんやり聞いていたのですが、一度きちんと聞いてみようと、今日はゆっくり小正月の思い出話を聞きながら母と酒盛りしました。
小正月って何かな?と、ネットで調べるといろいろ記述が見つかりました。なるほど、確かに母のいう小正月と言う行事があるようですが、地方ごとに様々な風習があるようです。
これはあくまで、母の実家での小正月なので正式な風習ではないかもしれませんが、ユニークなので、書き留めておこうと思います。
祖母が現役の頃までは、毎年盛大に行われていたようで、祖母が引退して本家の仕切りを他の方に委ねてからは時代にもそぐわなくもなり、年々小規模になっていったそうです。
まず、お正月が明けて8日に門松をかたす際に、左右それぞれ松をひと枝ずつ残しておき、それを門松があった辺りの土にさしておくそうです。このミニ門松とも言える松は、小正月の15日まで置いておきます。
1月15日、小正月、葉山では女正月の意味合いが強く、年末〜お正月にお客様で忙しい思いをした女性の労をねぎらう日でもあったそうです。
午前中、早い時間に晴れ着を来た女将さん方が続々と母の実家に集まって来て、多いときは30人くらい、それはそれは華やかで活気があったと。皆が集まるとそれではと、馬堀海岸裏手にある安房口神社まで初詣に出かけます。なぜ安房口神社なの?と聞いたら、女性の守り神で海の守り神でもあるからだと言うことです。
お詣りから帰るとお座敷にあがって、そこからがすごい。食べて飲んでの大宴会が始まります。普段はそのような席は「女性と子供は奥へ行ってなさい」と言われますが、この日は、「男、子供は引っ込んでなさい」の勢いです。
この日は、女性は何もしないので、男性の若い衆が台所でお燗をつけたり、お料理の上げ下げをします。
そして、一通りお腹いっぱいになった頃に、別の広間へ移動します。と、そこには呉服屋さんが反物や帯を広げて待っていて、『初買い』が始まります。皆であれが良いわね、これが良いわね、と、お酒も程よく入っているので気前良く、バンバン買うそうです(コワイ・・・)
女将さんの買いっぷりで、その家の商売状況がわかるとも言われるので、この日は買い過ぎても文句を言う旦那さんはいないそうです。(ホントかな・・・)
初買いが終わると、再びお座敷に戻ってお粥やご飯を食べ、お茶を飲むと、リセット。お酒なんか飲んでません、何もしてませんのようないつも通りの涼しいお顔で、「それでは、今年もよろしくお願い致します」とご挨拶を交わし解散となるそうです。
私は、実際に見た事はありませんが、母の話しを聞いただけでもワクワクします。晴れ着を着た女将さんがずらっと並ぶ光景、圧巻アでしょうね。見てみたかったです。
写真のように、門松をかたしてもらった後も、松だけは15日まで飾っておく母の習わしは、きっとこれからもずっと続くのでしょう。イタリアや海外の興味深さに惹かれて外へ外へと向いていた私ですが、母や祖母、さらには曾祖母、祖先がどんな暮らしをしていたか、もっと知りたいし、出来るならその習わしを引き継いでいきたいと思う小正月の夜です。(食べて、飲んで、爆買いしたいだけではありません・・・)